2007年4月14日 星期六

日本語研究について Writed by TakanariRyo

  日本語と言えば、凡そ五つの体系があります。それが1.漢文2.漢文訓読系3.和文4.候文5.現代日本語であります。「日本語は悪魔の言語だ。」と断定した外国人までいらっしゃいます。(注一)。確かにまずは平仮名、片仮名、数え切れないほどの漢字が形無き壁となって人々の目の前に立っています。そして漢字には訓読み、音読みがあり、それに音読には、呉音、漢音、唐音、慣用音さまざまあります。これだけを聞くと、頭が混乱せざるを得ないでしょう。

  しかし、音声面から見ると、日本語は案外単純なものであります。五つの母音しかなく、子音もそれなり多くはありません。つまり習得するのは容易いです。そのかわりに表記面は極端に複雑で、恐らく一生かかっても習得困難だと言えます。
 
  この両極の性質を持つ日本語を研究するために、一体どこに注目すべきで、どこから手を伸ばすべきかと言われれば、その手がかりとしてやはり古典日本語にしかないと思われます。私の考えですが、古代日本語の音韻に関する知識は絶対に日本語の系統を明らかにするための基礎として欠けてはならない知識に間違い有りません。

  例えば昔の文法書では、完了助動詞「り」は四段活用の已然形に付くことになっていましたが、今なら命令形接続説が認められるほうが余程多くなってきています。なぜこんなふうになったのでしょうか。それは「り」という助動詞は元々存続・存在を表す「あり」だと推測され、現代日本語の場合なら、「ている」に当たります。それを四段活用の動詞に付けると、動詞の連用形の下にかかります。例えば

咲きあり
  
  それから二つの音を融合すると、「ia」は「e」という形に残されていました。つまり「咲けり」となりました。これを単に仮名から見ようとすれば、已然形と命令形とはいずれも形が同じ「け」ですが、しかし橋本進吉氏の「上代特殊仮名遣」によって「エ列」音には甲類と乙類との二つのグループがあることが分かりました。そして「咲きあり」の融合して出てきた「エ」はその甲類に書かれています。

  「咲け(已然)・咲け(命令)」実は万葉仮名では明確に区別されています。已然形は乙類で、命令形は甲類になっています。ちなみにこの区別は片仮名や平仮名の時代に至って、音声の区別は無くなってしまいましたが、奈良時代の万葉仮名の「け」の甲乙類の区別によると、「咲きあり」から融合した「け」は命令形の「け」とは一致するのです。こうから考えると、已然形接続説は奈良時代までさかのぼることができません。なぜなら、奈良時代には、明らかに四段活用の已然形と命令形との区別があって、已然形ではないということが分かっているからには、平安時代もそれを引き継ぐべきだと考えられます。

  サ変の場合はどうでしょうか。サ変に完了の「り」が付くと「せり」となります。サ変の活用形は「せ、し、す、する、すれ、せよ」という形ですから、「り」は未然形に付いたというふうに考えられざるを得ません。というわけで、サ変の場合は未然形に付くと思われてきました。
  ところが、上代のサ変を調べてみると、僅かですが、命令形に「せ」の形があります。

  いざせ子床に       (万葉集・三四八四)

  という歌で、「いざせ」の「せ」は「しなさい」の意ですから、サ変の命令形です。サ変の命令形に「せ」があるとすれば、四段との対照上、サ変も命令形に接続すると見直したほうがよいでしょう。ただ、現在サ変の活用表には命令形「せ」がないのが普通ですから、未然形に付くと考えられても仕方がないと思います。
  しかしながら、前に説明したように、「り」は元々「あり」と推測することができますから、本来は連用形に付くものです。もし、連用形に付くのだと考えれば、「しあり」になるわけです。そうすると「-ia」というように母音が連続する場合、siとaと二つ融合して「せ」になります。この「せ」は仮名文字で書けば未然形になるけれども、実はサ変連用形の「し」に「あり」が付いた形がたまたま「せ」になっただけで、たとえ未然形と同一の音であっても、未然形の下に「り」が付いたものではなく、連用形に「あり」が付いたのだと理解すべきです。もちろん四段活用の理も一応同じです。

  ですから日本語の全ての経緯を究めて進みたければ、古典日本語の大切さを理解しなければなりません。もし日本語の系統を明らかにすることができれば、更なるこの日本文化の由来、日本人の見方、日本精神の核心、敷島のヤマト心など次第に解明することもできるはずではありませんか。言葉は決して断片的なものではありません。時の流れとともに古(いにしへ)の言葉と現代の言葉との間にはきっと強く結び合って絡んでいます。これは伝承と言われます。現代日本語を課題として研究する方々にも古典日本語の知識を持つべきだと私はこう案じております。

  ということで、私は懸命に古典日本語の道へ辿ってゆこうとします。

注一:フランシスコ=デ=ザビエル1549年鹿児島県種子島に上陸。

1 則留言:

Unknown 提到...

奈良時代の万葉仮名の「け」の甲乙類の区別によると、「咲きあり」から融合した「け」は命令形の「け」とは一致するのです。
の、根拠は何ですか?